先日公開した記事にあるように「来年、Appleは同社史上初の折りたたみ式iPhoneを投入する」と見ています。
「iPhone fold」という説もありますが、観測筋によれば、その名称はおそらく「iPhone Ultra」。これによりiPhoneエコシステムに、これまで存在しなかった新しいセグメントが開かれる可能性があります。
結果として、価値の階層を一段押し上げ、「iPhoneクラス」に対するユーザーの認識を高め、ひいてはAppleの優位性を象徴する存在になり得ると見ています。
過去にApple Watchで“Ultra”を冠したモデルが登場した経緯も踏まえ、本稿では「iPhone Ultra」が目指す位置づけを解説します。
出典:9to5mac
なぜ「Fold」ではなく「Ultra」なのか――3つの論点
1) 「Max」の上位概念が必要:ブランドの定義の整合
噂の折りたたみモデルはiPhone 18 Pro Maxよりも画面サイズが大きくなるといわれ、「Max」(最大)の概念がそのままでは成り立ちません。Appleの命名規則は常に完璧というわけではなく、たとえばiPad Airは名称から「薄くて軽い」印象を受けるものの、必ずしもiPad Proより軽いわけではありません。それでも、同社は製品名に一貫性を持たせてきました。
その一貫性を裏づける前例がMシリーズチップラインです。M3 > M3 Pro > M3 Max > M3 Ultraという階層で、Ultraが常に最高峰。Pro Maxを超える新カテゴリーを示したいなら、「iPhone Ultra」は既存のブランド言語にぴたりと合う完璧な選択になります。
2) 「折りたたみ」を超える物語:Appleは概念自体を作り替える
他社がAppleの戦略を躊躇なく模倣する一方で、Appleは既成の枠を離れ、独自の言語で製品を再定義してきました。
好例がApple Vision Pro。同社はそれを単なる**「VRヘッドセット」ではなく「空間コンピュータ」と呼び、まったく別のコンピューティングプラットフォームとして提示しました。AIについても、一般的な「人工知能」ではなく「Apple Intelligence」という表現で、自社のアイデンティティを際立たせています。
この文脈で見ると、Appleが「iPhone Fold」と名づける可能性は低いでしょう。「Fold」はSamsungやGoogleを含むAndroid企業群を強く想起させ、追随者の印象を与えかねません。
一方で「Ultra」は、Galaxy S Ultraなどの前例があるとはいえ、サムスンの折りたたみスマートフォンには用いられていません。iPhone Ultraという名は、この製品が既存と一線を画す、独立性の高い、新鮮な印象をユーザーに与えます。つまり、これは単なる折りたたみ式iPhoneではなく、全く新しいクラスを宣言する言葉なのです。Appleのデザイン史に新たな章を開く呼称と言えるでしょう。
3) 「超高額」にふさわしい名札:心理的価格受容
価格の観点も重要です。Apple Watch Ultraは799ドルで登場し、Apple Watch Series(約399~429ドル)のほぼ2倍というレンジでポジショニングされました。
「Ultra」がよりプレミアムで耐久性と価値を内包するシグナルとして機能したわけです。
噂では最初の折りたたみ式iPhoneは少なくとも2,000ドル。対して、現行で最も高価なiPhone 17 Pro Maxの1,199ドルからは約800~1,000ドル上乗せされる計算です。
この差を単に「Fold」という一般語で受け止めると高すぎると感じられかねませんが、「Ultra」というラベルが付けば感情的には妥当性が増します。Appleが繰り返し成功させてきた心理的な価格設定戦略が、ここでも機能する可能性が高いのです。
さらに広義には、「Ultra」は名称以上の意味を持ち、価格とセグメントの階層を拡張するための装置でもあります。他社が価格を下げる**・廉価モデルで競争する局面でも、Appleは価値の階層を登り、ステップごとにブランドの魅力を保ちながら利益を引き上げていきます。
エコシステムの梯子を上へ:ブランド・ラダーリングの延長線
Appleが長年巧みに活用してきたのが**「ブランド ラダーリング」。下位レベルを潰すのではなく、各レベルがエコシステム全体を引き上げる設計です。
たとえば、iPhone SEはエントリーモデル、(もし実現すれば)iPhone Airはハイエンドモデル、そしてiPhone Pro/Pro Maxもハイエンドとして位置づけられます。
そのうえで、iPhone Ultraが画期的なデザインと洗練された折りたたみ技術を統合し、エコシステムの頂点を極める旗艦として据えられる――そんな構図が見えてきます。
まとめ
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iPhone Ultraという名は、Pro Maxを越える最高峰の座を明確化(M3 > M3 Pro > M3 Max > M3 Ultraの系譜)。
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「Fold」に頼らず、Vision ProやApple Intelligenceに通じる独自の物語で製品概念を再定義。
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799ドルのApple Watch Ultraが示したとおり、「Ultra」は超高額レンジでも心理的受容を得やすい。2,000ドル級という噂の価格にも整合。
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ブランド ラダーリングによって価値の階層全体を引き上げ、エコシステムをより強固にする狙い。
要するに、iPhone Ultraは「単なる折りたたみ」ではなく、「iPhoneの新しいクラス」を体現するネーミングであり、Appleの優位性を再び印象づける旗印になり得ます。